2020年12月1日火曜日

NO411 「昼の空の星」

私たちはこれまで目に見えるものに重きを置く唯物的な価値観に支配されすぎてきたのではないでしょうか。給料が上がったとか、今年の売り上げは去年より伸びたとか、成績がよくなったなど、数字であらわしたり、数量で測れるものを大事に思い、そこに価値を見いだしてきました。
昼の星は目には見えません。だから、昼の空に星は存在しない。そんなふうに考えてきたのです。でも見えないだけで、昼にも星は輝いているのです。医学の世界でも、目に見える患部だけを治療することが医学の役目だと考えられて、目に見えない患者の心は体の病気とは無関係なものとされてきました。しかし、気の持ちよう、心のありようで病気がよくなったり悪くなったりするのは動かしがたい「科学的事実」となっています。
知識や情報ばかりが増えて頭でっかちになった結果、かしこく、利口にはなったが、死に思いをはせたり、命のつつしみを考えたりする生命本来の深い思考が不足してしまったのです。ですから、唯物的な思考をする人ほど「昼に星は存在しない」という“正しくて浅い思考”しかない傾向が強い。そうして人知の及ばないものにたいする畏敬の念や謙虚な思いを忘れたときから、私たちは目に見えないものを軽視し、目に見えるものを偏重しはじめたのです。節度や調和といった生命思考の視点に立ってみれば、ほんとうは人間のおごりや思い上がりという「愚かさ」の始まりだったのかもしれないのです

~ 筑波大学名誉教授 村上和雄さんより ~

所長視点)
「深く掘った井戸の底からは昼でも星が見える」といいますが、それは本当だそうです。ものごとをそのように深くとらえられる人のほうがその思考も、その命も深いものになっていきます。見えないだけでなにかある、それは尊いものであるととらえて生きる生き方が輝く時代が来ました

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