2021年2月17日水曜日

NO479 「ストレス」

ストレス学を創始したハンス・セリエは、「ストレスは、別のストレスを与えることによって転換される」という。
これは、精神的なストレスは肉体的なストレスで解消されるということに通じ、私たちの日常に当てはめれば、「仕事で頭ばかり使ったあとは、体を動かすのがよい」ということになる。

私の日常は、図らずもこれを実践しているかのように思う。
あるときは診察をする、あるときは原稿を書く、そしてまたあるときは旅行に出かけ、書類を整理し…と、時間に追われる毎日だが、こんな生活が健康維持に役だっているのだろう。
私は、ひとつのことに長時間集中しないように心がけている。
二時間ひとつのことをやったら、次は二時間、別の仕事をする。
このほうが能率がいい。

再びハンス・セリエの学説。
「ふたつの違うストレスを間を置かずに与えた場合、その動物の抵抗力は高まる。が、同じストレスを一定の期間を置いて与えられると、二度目のストレスに対して高度に敏感になり、病気になりやすい」
つまり、頭脳にストレスを与えた後は、肉体にストレスを与える。
こうしていると抵抗力が高まり、健康になる。
しかし、同じような精神的ダメージだけが続くと、人間は抵抗力を失うのである。

たて続けに大切な人を失ったとき、人はなかなか立ち直れない。
立ち直ろう、という気力を失ってしまうのである。
アメリカの産業精神衛生部会は、「肉親の死などを体験した社員には、半年以内に配置転換や転職を勧めるのはやめたほうがよい」という報告をしている。
あいつぐ精神的なストレスがひきがねになって、うつ病やノイローゼが発症しやすいからだ。

必死に体を動かしていると、無心になってくる。
それが精神的なストレスを和らげてくれる。
私は、母の輝子についていろいろ書いているが、苦しいとき、悲しいとき、たいへんなときこそ母が行動的であったのは、この学説にも当てはまっている。
不幸をはね返すには、あえて行動的になるのが一番なのかもしれない。

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